2015年8月2日日曜日

本日の魔法の呪文 85



" 日本人には意外に感じられますが、
西洋絵画で純粋に「風景」が主題となるのは、かなり時代が下ってからのことです。
中世の半ばすぎまで、
人々にとって圧倒的にリアリティがあったのは、
神や天使や悪魔の存在でした。
しかも当時の教会は、自然を、やがては消滅する物質と見做し、
永遠不滅の神に対置させます。
そのため人々は、風景を愛でることと肉の快楽に耽ることを似た行為のように思い、
罪悪感すら持たされていました。"

「怖い絵」で人間を読む 中野京子 P138より


中野さんのこの本、
美術館に行く前に読むと、
とても絵を楽しむきっかけになっていいのではないかなぁと思う。
わたしは美術に関しては徹底的に門外漢なのだけど、
それでも、こういうのが好き、というのだけは勝手に自分の中にあって、
美術館にでかけるのは昔から大好きです。

わけもわからず、ただ絵から受ける印象に強烈に恐怖と魅惑を感じたり、
あるいは、とても共感するものを感じたり(描かれている風景に、全く馴染みがなくても!)
そういうことの理由みたいなものを、ひょんなことから捜し当てることができたとき、
ああ、人間って深いなぁといつも思う。

今回の引用箇所、自然すらも偶像崇拝、
いや、自然を愛でることこそが偶像崇拝、
というこの考え方、
今の世界が徹底的にあべこべになっている理由としてとてもしっくりきました。

日本人は、もともと肉食文化=死と生のコントラストに脅されて生きる
ことからいちばん縁遠い生き方の民族だったと思います。

だから、自然の無限の大きなエネルギーを前にしても、恐怖にかられる必要がなかった。

なのに、ここ数十年足らずの間に、肉食があたりまえになり、
いまや世界中のどこの国よりも乱雑なやり方で、無節操に、多種多様なタンパク質を摂取している。
もともと菜食に適した体質であるが故、そういう食生活をしたことで受ける害というものは、
西洋のたたきあげの人々よりもめちゃくちゃひどいのではないか、とわたしは感じている。

つまり、エネルゲイア領域を抹殺する度合いが、
もともとそういう感性を強く持っていたが故に一番ひどい。

その、内的世界の荒廃が、世界で一番ひどいのは今日本だと思っているけど、
それはそれだけ、大きくひっくりかえるチャンスがきているということだと
わたしは受け止めようと思っている。

実際、わたし自身がそうやって生きてきているから。

同じ景色を違う感性で眺めたいと思うなら、
いくらでもそのチャンスは転がっている。あとは、そこに手をかけるかかけないか、やね。

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