2015年7月5日日曜日

本日の魔法の呪文 57


" 特筆すべきは、テセウスがミノス王の娘、
美しきアリアドネから糸玉をもらう、という幸運を手にすることです。
歴史的にみて太古の母権制文化の叡智、
「偉大なる母」の叡智は人間に、
まり父権制文化に移行していきます。
ラビリンスに入って歩いていくときに、
テセウスは糸を転がしていきます。
全てはテセウスが「赤い糸」を見失わないことにかかっているのです。

(略)

叡智を「つかみとること」、「概念の形成」こそ、ギリシャ文化期の主要な成果です。
テセウスはその行為によって、その文化を代表する一人となったのです。"

フォルメンを描くⅠ ルドルフ・クッツリ 著  石川恒夫  訳 P76 より抜粋


クラシックの音楽を演奏することと、
組紐模様を描くことはどこか似ているかもしれない。
既にもう、こういうルートを辿ればOKだ、
という曲線が形として先に示されている。


それを忠実に辿ることができたなら、
そこに命が宿り、偉大なる母の叡智とつながる。
けれど、形だけなぞっても、叡智にはつながれない。


つながっているかどうかわかる人がどんどん少なくなり、
形の仰々しさだけがもてはやされ、
暴走していったとき、その形すらも存在しえなくなり共に崩壊する。

糸は、時がたてば自然に朽ちて土に還る。
叡智みたいなものは、一代限りであって、それを代々引き継げるようなものじゃない。
なのに、その軌跡を朽ちない形で保存できるようになったことで、
全てがおかしくなってしまったのだと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿