2015年8月20日木曜日

本日の魔法の呪文 100



"以前、どもっていた患者は、
自分の言語上の問題をつぎのように話してくれた。
「私のどもりは、現実を求める戦いでした。
『自分でない私』が、本当の私が顔をのぞかせるのを防ぐために話しつづけていたように思えます。私は言葉を話しはじめてからずっと、
いつも口にする言葉を注意深くえらばなくてはなりませんでした。
私は両親の考え方やことばづかいを口にするようになりました。
私は彼らが気にいることを話しました。
まるで、自分の口で親たちにしがみついていたようなものです。
現実の私が感じていることを口にしないかぎり、
私は両親に受け入れられたのです」

現実の自己に立ちかえり原初的苦痛を経験している間、
この患者は一度もどもらなかった。"

原初からの叫び アーサー・ヤノフ著 中山善之訳  どもることの深層構造 P143より抜粋

幼いころは、わけもわからず、とにかく地雷を踏まないように、
という一心で、いつも言葉を選ぶ癖がついていた。
大きくなると、それを反射的にやっていることすら意識の俎上にあがらなくなった。

そうする必要がない暮らしが長くなり、
そうやって言葉を選ぶことをしばらく忘れていたが、
今度は違う意味で、言葉を選ばねばならない日々が続く。

以前は、自分の身を守るためにそうしていたけれど、
今は、狭い意識の世界が全てだと思い込んでいる普通の人との接点をもとうとするとき、
彼らと重なり合う領域の言葉、というものを探すのがほんとうに難しい。

ばかにだけはされたくない、という構えで戦々恐々と生きている人とは、
心を開いて話をすることはできない。
開いた方が弱みを握られ、低い側に置かれる、というルール内に彼らは生きているから。

そういう人々に取り囲まれ続けていると、
わたしの方が人間としておかしいような気がしてくる。

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